G検定は、AI技術の基本的な知識や応用能力を評価する試験です。検定試験では、AI技術に関連する倫理や法律に焦点を当てた問題が多く出題され、倫理・法律の問題に関する知識は、G検定を合格する上で非常に重要になります。
また、最新のAI関連の時事問題を把握することも求められるため、幅広い知識と情報収集能力が要求されます。
この記事では、G検定の時事問題セクションの重要性と学習方法、そして主な出題事例について詳しく解説します。今後受験される方は、ぜひ参考にしてください。
- 時事問題の傾向
- 時事問題の学習方法
- 時事問題の出題事例
G検定時事問題(倫理・法律)の重要性
G検定は、AI技術に関連する知識を評価する試験であり、特に倫理・法律の項目は全体の出題数、約200問の内おおよそ4割出題される、重要なセクションとなっています。
ここではG検定の時事問題(倫理・法律)の重要性について詳しく解説します。
倫理・法律の基本的な理解
AI技術の進展は社会に多大な影響を与えており、その影響を理解し、適切に対処するための法律・倫理の知識が求められます。
例えば、AIによる個人情報の取り扱いや、著作権の問題、データプライバシー、バイアスの問題など、多くの倫理・法律関連の問題が存在します。
これらの知識は、AI技術を適切に利用し、社会に対して貢献するために必要不可欠です。
社会的影響の理解
AI技術の社会的影響を理解することは、技術者にとって非常に重要です。
例えば、自動運転車の導入によって交通ルールや保険制度にどのような影響が出るのか、AIによる判断が法律的にどのように扱われるのか、などの問題は、技術開発と密接に関連しています。
これらの知識は、技術者が社会と連携し、技術の進展を支えるために重要です。
最新の法律・規制の動向の把握
AI技術は日進月歩で進化しており、それに伴って法律や規制も変化しています。最新の法律・規制の動向を把握することは、技術者が法律違反を避け、社会にとって有益な技術を開発するために必要です。
また、法律・規制の動向を理解することで、未来の技術開発の方向性を予測し、適切な対応を取ることも可能になります。
信頼と責任の確立
倫理・法律の知識は、技術者が社会に対して信頼と責任を持って行動するために必要です。
法律遵守はもちろんのこと、倫理的な判断を下す能力は、技術者が社会に受け入れられ、信頼を得るために重要です。そして、この信頼は技術者が持続的に技術開発を行う基盤となります。
G検定 時事問題の学習方法
G検定で出題される時事問題は、AIに関連する最新の法律や倫理の問題に焦点を当てています。時事問題を効果的に学習するためには、以下の4つの方法が推奨されます。
出題される時事問題の中には、最新のAIに関わる法律改正に関するものや、時事に関わる問題も出題されます。公式テキストでカバーできない問題は、時事ニュースを確認したりの追加の対策が必要です。
時事問題対策①|公式テキストで概要把握
2024年春にG検定公式テキストが「第3版」に改訂され、倫理・法律・時事に関する内容がより詳しく記載されています。まず最初にわかりやすく体系化されている公式テキストから学習することをおすすめします。
時事問題対策②|参考書で自習
2023年に発刊されたG検定で出題される法律・倫理問題の重要項目を基礎から学べます。本書の末尾には、ディープラーニングG検定の過去問題を収録した演習問題が掲載されています。
本書は、ディープラーニングG検定の試験対策だけではなく、AI開発者やAIを活用してビジネスを行っている方、DX推進をされている方などにも幅広く活用できます。
時事問題対策③|AI白書で自習
最新のAI白書を読むことでAIのトレンドを掴むことができるのでおすすめです。しかしながら、3千円を超えて値段が高いこと、ボリュームが多くて読みきれないことが難点です。
最寄りの図書館などを利用するのがおすすめです。
時事問題対策④|時事ニュース確認
日頃からAIに関する時事ニュースをチェックしましょう。定期的にまとめ記事をチェックすると効率良く学習できます。
Ledge.aiでは「ビジネス分野でのAI活用事例」「AI関連の学習コンテンツ情報」「AI開発に関わる最新ニュース」など、人工知能に関する多岐にわたる情報をチェックできます。
時事問題の主な出題事例
G検定の出題される時事問題は、AI技術が社会にもたらす法律や倫理の問題に焦点を当てています。以下に、主な出題事例とそれぞれの背景について詳しく解説します。
著作権法について
AI技術が進化するにつれて、著作権法は新たな課題に直面しています。例えば、AIによって生成された音楽やアート作品の著作権は誰に帰属するのか、という問題が生じています。
これに関連して、法律の枠組みや最新の判例、国際的な対応について理解することが重要です。
AIによる著作物
AIによる画像、文章、楽曲の自動生成の創作物に関して、AIによる創作物の著作物性を明文的に認めた法律は現在存在しません。
学習用データに関する著作権法
2018年12月14日に成立した著作権法の改正により、2019年1月1日から、学習用データに関する著作権法の規定が施行されました。<著作権法第30条の4>
この改正は、AI(人工知能)技術の進展に伴い、著作物の学習用データとしての利用が拡大していることに対応したものであり、学習用データの利用を促進し、AI技術の開発を支援することを目的としています。
デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した柔軟な権利制限規定の整備
引用元:デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した柔軟な権利制限規定に関する基本的な考え方について
著作権法第30条の4
著作物は、次に掲げる場合その他の当該著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合には、その必要と認められる限度において、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
一 著作物の録音、録画その他の利用に係る技術の開発又は実用化のための試験の用に供する場合
二 情報解析(多数の著作物その他の大量の情報から、当該情報を構成する言語、音、影像その他の要素に係る情報を抽出し、比較、分類その他の解析を行うことをいう。第四十七条の五第一項第二号において同じ。)の用に供する場合
三 前二号に掲げる場合のほか、著作物の表現についての人の知覚による認識を伴うことなく当該著作物を電子計算機による情報処理の過程における利用その他の利用(プログラムの著作物にあつては、当該著作物の電子計算機における実行を除く。)に供する場合
引用元:e-Gov
学習済みモデルの保護
学習済みモデルは次の通り知的財産のおいて「技術」「契約」「法律」の3つ観点で保護されます。
- 技術 技術的工夫によって防ぐ(クラウド化、等)
- 契約 契約に基づく、利用条件の付加
- 法律 知的財産権に関する法律(特許法、著作権法、不正競争防止法)で保護
自動運転に関わる法律
自動運転技術は交通事故の減少や交通流の改善をもたらす可能性がありますが、同時に法律上の新しい課題も生じています。
例えば、自動運転車が関与する交通事故の際の責任の所在や、法規制の適用についての理解が求められます。
自動運転のレベル分け 【SAE J 3016(2016)】
自動運転のレベル分けの定義は、アメリカの非営利団体SAEインターナショナルによって定義された【SAE J 3016(2016)】が世界中で共通の基準として利用されています。
自動運転レベル | 名称 | 主体者 | ルール |
---|---|---|---|
レベル0 | 運転自動化なし | 運転者 | ・ドライバーがすべてを操作 |
レベル1 | 運転支援 | 運転者 | ・走行エリアの限定あり ・システムがステアリング操作、加減速のどちらかを対応する ・運転手がステアリング操作、加減速のどちらかを対応する |
レベル2 | 部分運転自動 | 運転者 | ・走行エリアの限定あり ・システムがステアリング操作、加減速のどちらもサポート ・常時運転手がシステムを監視する |
レベル3 | 条件付き運転自動 | 車 (システム) | ・走行エリアの限定あり ・緊急時はドライバーが操作対応する |
レベル4 | 高度運転自動 | 車 (システム) | ・走行エリアの限定あり ・運転手なしでの走行OK |
レベル5 | 完全自動運転 | 車 (システム) | ・走行エリアの限定なし ・運転手なしでの走行OK |
海外の状況
アメリカのカリフォルニア州では、すでに無人自動運転車の走行が認められている。
日本の状況
2019年5月に「改正道路交通法」が成立し、レベル3(運転支援機能)の自動運転の実用化に向けた法整備が成立した。レベル3の条件付き運転自動運転中は、スマホ操作や読書が可能になります。
AIが犯した過失責任に関する問題
AIの判断ミスやシステムの不具合によって生じる損害に関する法律的責任は、まだ明確に定義されていない場合が多いです。
この領域では、過去の判例や法律の枠組みを理解し、AIの過失責任に関する最新の議論を把握することが重要です。
ドローン関連
ドローン技術の進展に伴い、空域の利用やプライバシーの保護、安全確保に関する法律が注目されています。
ドローンの運用ルールや関連法規、最新の政策動向について理解することが求められます。
- 航空法
- 小型無人機等飛行禁止法
- 道路交通法
- 民法
- 電波法
- 都道府県、市町村条例
許可が必要になる飛行場所
- 空港周辺
- 150m以上の上空
- 人家の密集地域(人口集中地区、DID地区)
承認が必要になる飛行方法
- 夜間飛行
- 目視外飛行
- 第三者やその所有物(家や車)の30m未満の距離での飛行
- 催し場所での飛行
- 危険物の輸送
- 物件投下
情報銀行
情報銀行は個人のデータを安全に管理し、利用する新しいシステムです。個人情報の保護やデータ利用に関する法律、情報銀行の法的枠組みについて理解することが重要です。
情報銀行は個人から預かった個人データをその個人の同意する範囲内で運用し、そこから得られる利益を個人に還元する組織です。
情報銀行は、個人の情報を必要とする事業者に提供することでその対価を得ることになります。
透明性レポート
透明性レポートとは、テック企業が政府の捜査機関から受けた情報開示の請求についてまとめたものです。
企業がAI技術の利用に関して透明性を保つために公開するレポートについて、その内容や法律的意義、企業に求められる透明性のレベルについて理解することが重要です。
透明性レポートに関する過去の経緯は以下のリンクを参照ください。
FAT|Fairness, Accountability, Transparency
「人間中心のAI社会原則」において、「公平性、説明責任及び透明性」の項目があり、AIの社会実装において留意すべき3つの項目、公正性(Fairness)、説明責任(Accountability)、透明性(Transparency)の原則が重要視されています。
説明責任の範囲は、AIによる判断の根拠を必ずしも説明可能にすべきというわけではありません。しかしながら、これらの説明責任を社会に向けて発信する必要があります。
- AIに関する説明責任の範囲
- AIを利用しているという事実の説明
- AIに利用されるデータの取得方法や使用方法
- AIの動作結果の適切性を担保する仕組み
説明可能なAI(人工知能)(Explainable AI:XAI)
XAI(説明可能なAI)とはディープラーニングによる特徴量抽出の自動化による、いわゆるブラックボックスを説明可能にするためのアプローチを表します。
その他時事問題に関するキーワード
最新の時事問題に関連するキーワードやトピックを把握し、それに対する法律や倫理の知識を深めることが求められます。
各種の時事問題についての法律、政策の動向、国際的な対応について理解することが重要です。
- パートナーシップオン AI
- GDPR (EU一般データ保護規則)
- ディープフェイク
- プライバシーバイデザイン
- 自律型致死兵器システム(LAWS)
- 特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)
まとめ
本記事では、G検定に出題される時事問題の勉強法と、主な出題事例を紹介してきました。
G検定の時事問題セクションは、倫理・法律関連の知識を評価する重要な項目であり、これに関連する問題がテストの約4割を占めています。
倫理・法律関連の基本的な知識を有することは不可欠で、特に最新の時事問題についての理解はG検定合格に向けて重要です。
本ブログではG検定の学習に役立つ情報を提供しています。ぜひ、以下の記事もご覧ください。